
「ぼくだけ、3回まで失敗してもいいことにしよう!」
みんなは1回しか失敗できないのに、一人だけ特別なルールを作るのは不公平ですよね。
このように、周りの人のことを考えず、自分に都合のよいように物事を進めることを表す四字熟語が、「我田引水(がでんいんすい)」です。
この記事では、我田引水の意味や読み方、田んぼの水にまつわる由来、学校や家庭で使える例文、似た言葉との違いを、小学生にもわかりやすく解説します。
最後には、親子で楽しめる3択クイズもあります。
我田引水(がでんいんすい)の意味とは?
我田引水とは、他人のことを考えず、自分に都合のよいように物事を考えたり、言ったり、行動したりすることを意味する四字熟語です。
読み方は「がでんいんすい」です。
例えば、クラスで遊ぶゲームのルールを決めるとき、自分が勝ちやすくなるルールばかり提案する場合です。
みんなが公平に楽しむことより、自分だけが得をすることを優先しています。
そんな自分中心の考え方や行動を、「我田引水」と表現します。
小学生向けにひと言で説明すると?
我田引水とは、「ほかの人のことを考えず、自分に都合よくすること」です。
例えば、次のような場面があります。
- 自分だけ有利になるように、ゲームのルールを変えようとする。
- 家族でお出かけ先を決めるとき、自分の希望だけを押し通そうとする。
- 話し合いで、自分に都合のよい意見だけを取り上げる。
- 自分が得をするために、出来事の一部分だけを説明する。
このように、我田引水は自分中心の考え方や行動を批判するときによく使われます。
自分の希望を言うことも我田引水になる?
いいえ。自分の希望を伝えるだけで、我田引水になるわけではありません。
例えば、「私はドッジボールがしたい」と友達に伝えることは、普通の意見表明です。
一方、友達の意見を聞かず、自分が遊びたいドッジボールに決まるよう、無理に話を進めるなら、我田引水な態度と言える場合があります。
自分の意見を持つことと、ほかの人の事情を無視して押し通すことは違います。
我田引水の漢字にはどんな意味がある?
我田引水は、「我田」と「引水」に分けて考えると意味を覚えやすくなります。
「我田」は自分の田んぼ
「我(が)」は、自分や自分自身のことです。
「田(でん)」は、お米などを育てる田んぼを表します。
つまり「我田」は、自分の田んぼという意味です。
「引水」は水を引き入れること
「引(いん)」には、引く、引き寄せるという意味があります。
「水(すい)」は、水のことです。
「引水」は、川や用水路などから水を引き入れることを表します。
我田引水は「我が田に水を引く」と読み下し、自分の田んぼにばかり水を引く様子から、自分の利益を優先することを表しています。
我田引水の由来は?日本のことわざから生まれた言葉
我田引水は、日本で使われていたことわざをもとに生まれたと考えられています。
まずは、田んぼと水の関係から見てみましょう。
田んぼの水を独り占めしたら?
お米を育てる田んぼでは、水の管理がとても大切です。
昔から、川や用水路などを利用して、多くの田んぼへ水を届けてきました。
ところが、水の量が限られているとき、自分の田んぼにばかり水を引き入れたらどうなるでしょうか。
ほかの田んぼに水が十分に届かず、困る人が出てくるかもしれません。
このように、周りの人のことを考えず、自分の利益ばかりを優先する姿が「我田引水」の意味につながっています。
江戸時代には「我が田へ水を引く」と言っていた
小学館『ことわざを知る辞典』によると、江戸時代には「我が田へ水を引く」「我が田に水引く」などの表現が使われていました。
どちらも、自分の都合のよいように物事を取り計らうことを表すことわざです。
同辞典では、江戸時代の用例には「我田引水」という四字熟語の形が見られず、中国の古典にも同じ形の用例が見当たらないと説明されています。
そのため、江戸時代から使われていた日本のことわざを、明治時代に漢語風の四字熟語へ変えたものと考えられています。
このように、日本で作られた漢字の熟語を「和製熟語」と呼ぶことがあります。
明治時代の文章にも使われている
小学館『精選版 日本国語大辞典』には、内田魯庵(うちだろあん)の『落紅(らっこう)』(1899年)に見られる「我田引水」の使用例が掲載されています。
つまり、少なくとも明治時代には、現在と同じ四字熟語の形で使われていたことがわかります。
ただし、1899年に初めて作られたという意味ではありません。
それ以前から使われていた可能性もあるため、言葉が誕生した年までは断定できません。
我田引水は、江戸時代に使われていた日本のことわざをもとに、明治時代に四字熟語の形になったと考えられている言葉です。
我田引水の使い方と例文
我田引水は、「我田引水な考え方」「我田引水の主張」「我田引水に解釈する」などの形で使います。
学校生活での例文
- 「自分だけ何度も遊べるようにルールを変えようとするのは、我田引水な提案だ。」
- 「クラスの話し合いで、自分に都合のよい意見ばかり取り上げるのは我田引水だ。」
- 「当番の仕事を自分だけ減らそうとするのは、我田引水な考え方だと思った。」
- 「みんなの意見を聞き、我田引水にならないように話し合った。」
家庭や日常生活での例文
- 「兄は自分だけ有利になるように、我田引水なゲームのルールを提案した。」
- 「家族旅行の行き先を、自分の好きな場所だけに決めようとするのは我田引水だ。」
- 「おやつを多くもらうために、自分に都合のよい理由ばかり説明するのは我田引水だ。」
- 「家族全員の希望を聞き、我田引水にならないように予定を決めた。」
仕事や大人の会話での例文
- 「自分の部署に有利な数字だけを示すのは、我田引水な説明と受け取られかねない。」
- 「その主張には一理あるが、少し我田引水なところがある。」
- 「自社に都合のよい条件ばかり求める交渉は、我田引水と批判された。」
- 「我田引水と思われるかもしれませんが、私たちの取り組みを紹介します。」
親子の会話で我田引水を覚えてみよう
例文1:ゲームのルールを決めるとき
子ども:「友達が、自分だけ3回失敗してもいいルールにしようって言うんだ。」
お母さん:「ほかのみんなはどうなの?」
子ども:「みんなは1回しか失敗できないんだよ。」
お母さん:「それだと自分だけ有利だね。我田引水なルールと言えるかもしれないね。」
子ども:「みんな同じルールで遊べるように話してみる!」
例文2:家族旅行の行き先を決めるとき
子ども:「今度の旅行は、絶対に遊園地がいい!」
お父さん:「遊園地が好きなんだね。でも、お姉ちゃんは水族館に行きたいみたいだよ。」
子ども:「じゃあ、ぼくの希望だけを押し通したら我田引水になっちゃう?」
お父さん:「自分の希望を言うのはいいことだよ。みんなの意見も聞いて決めようね。」
例文3:クラスの話し合い
子ども:「学級会で、ある子が自分に都合のいい意見ばかり取り上げていたんだ。」
お母さん:「ほかの意見はどうなったの?」
子ども:「あまり聞いてもらえなかったみたい。」
お母さん:「それだと我田引水な進め方になりそうだね。」
子ども:「次は、みんなの意見を公平に聞こうって提案してみるよ。」
我田引水は悪い意味?褒め言葉にも使える?
我田引水は、一般的に批判的な意味で使われる四字熟語です。
周りの人の事情を考えず、自分の利益ばかりを優先する様子を表すためです。
そのため、通常は褒め言葉として使いません。
ただし、自分の意見を述べる前に「我田引水かもしれませんが」と前置きすることがあります。
これは、自分に有利な意見に聞こえる可能性を認めながら、話を進める言い方です。
例えば、自分の会社の取り組みを説明するときに使われることがあります。
この場合も、我田引水そのものがよい意味になるわけではありません。
我田引水と「わがまま」「こじつけ」の違い
わがままとの違い
「わがまま」は、自分の気持ちや希望を優先して、周りの人に無理を言うことです。
一方、我田引水は、自分の利益になるように物事を説明したり、進めたりすることに重点があります。
例文:「みんなの反対を無視して、自分が遊びたいゲームに決めようとするのは我田引水な態度だ。」
こじつけとの違い
「こじつけ」は、無理に理由をつけたり、関係の薄い物事を結びつけたりすることです。
例えば、自分が得をするために、無理な理由を作って相手を納得させようとする場合です。
このような場面では、我田引水とこじつけの両方の意味が重なることもあります。
ただし、こじつけは自分の利益が目的でなくても使うことがあります。
我田引水と似ている四字熟語・言葉
手前勝手(てまえがって)
手前勝手は、他人の事情を考えず、自分の都合ばかりを優先することです。
我田引水と非常に近い意味で使われます。
例文:「自分だけ早く帰れるように予定を変えるのは、手前勝手な行動だ。」
牽強付会(けんきょうふかい)
牽強付会は、道理に合わないことを、自分の主張に合わせて無理に結びつけることです。
我田引水は自分に有利にすること、牽強付会は無理な理屈をつけることに重点があります。
例文:「関係の薄い出来事を無理に結びつけるのは、牽強付会な説明だ。」
自己中心的(じこちゅうしんてき)
自己中心的は、自分の考えや利益を中心にして物事を判断する様子です。
四字熟語ではありませんが、我田引水と似た場面で使われます。
例文:「自己中心的にならず、周りの人の意見も聞こう。」
| 言葉 | 意味のポイント |
|---|---|
| 我田引水 | 自分に有利なように物事を進める |
| 手前勝手 | 周りを考えず自分の都合を優先する |
| 牽強付会 | 無理な理屈で物事を結びつける |
| 自己中心的 | 自分を中心に考える |
我田引水の反対語・対照的な四字熟語
公平無私(こうへいむし)
公平無私は、自分の利益や個人的な感情にとらわれず、公平に判断することです。
自分の都合を優先する我田引水とは、対照的な考え方です。
例文:「学級委員は公平無私な態度で、みんなの意見を聞いた。」
公明正大(こうめいせいだい)
公明正大は、公平で隠し事がなく、正しく立派なことです。
例文:「審判は公明正大な態度で試合を進めた。」
これらは我田引水と対照的な意味を持ちますが、必ずしも一対一の厳密な対義語というわけではありません。
我田引水を使うときの注意点
自分の希望を伝えることと区別する
我田引水は、自分だけが得をするように物事を進めることを批判する言葉です。
自分の希望を伝えたり、必要なことをお願いしたりするだけでは、我田引水とは言えません。
周りの人の事情や公平さを考えているかどうかが大切です。
友達を責める言葉として使うときは注意する
我田引水には、相手の行動を批判する意味があります。
そのため、友達に「あなたは我田引水だ」と直接言うと、強く責めているように聞こえる場合があります。
意見が違うときは、まず相手の理由を聞き、どこが不公平なのかを具体的に話すことも大切です。
自分に有利な結果が出ただけでは我田引水にならない
例えば、話し合いの結果、自分が希望した遊びに決まったとします。
それだけで、我田引水になるわけではありません。
みんなで公平に話し合って決まったなら、自分だけに都合よく進めたとは限らないからです。
我田引水を英語で表すと?
我田引水に近い英語表現には、次のようなものがあります。
- self-serving:自分の利益を優先する、自分に都合のよい。
- act in one's own interest:自分の利益のために行動する。
- interpret something in one's own favor:物事を自分に有利なように解釈する。
例えば、次のように使えます。
That is a self-serving argument.
意味:「それは自分に都合のよい主張だ。」
また、英語には次のようなことわざもあります。
Every miller draws water to his own mill.
これは、粉屋が自分の水車小屋に水を引くことにたとえ、自分の利益を優先する様子を表す言葉です。
我田引水とよく似た発想ですね。
我田引水の意味を3択クイズで確認しよう!
問題:次のうち、我田引水に最も当てはまるのはどれでしょう?
- 「私はサッカーがしたい」と希望を伝え、みんなの意見も聞いた。
- みんなで公平に話し合い、自分の希望とは違う遊びに決まった。
- 自分が勝ちやすくなるように、ほかの人の反対を無視してゲームのルールを変えようとした。
答えと解説を見る
正解は③です!
我田引水は、他人のことを考えず、自分の利益や都合を優先することを意味します。
③は、ほかの人の反対を無視して、自分だけが有利になるようにルールを変えようとしているため、我田引水に当てはまります。
①は、自分の希望を伝えながら、ほかの人の意見も聞いています。
②は、みんなで公平に話し合って決めています。
どちらも、我田引水とは言えません。
我田引水についてのよくある質問(FAQ)
Q1. 我田引水の読み方は?
「がでんいんすい」と読みます。
Q2. 我田引水はどんな意味?
他人のことを考えず、自分の都合のよいように物事を考えたり、進めたりすることです。
Q3. 我田引水は四字熟語なの?
はい。三省堂『新明解四字熟語辞典』や学研『四字熟語辞典』などに掲載されています。
Q4. 我田引水は中国の故事成語なの?
中国の故事成語ではなく、日本のことわざをもとに生まれた和製熟語と考えられています。
Q5. 我田引水は褒め言葉なの?
いいえ。一般的には、自分の利益を優先する態度を批判するときに使われます。
Q6. 我田引水と手前勝手の違いは?
どちらも自分の都合を優先することを表します。我田引水は、自分に有利なように物事を説明したり進めたりすることにも使われます。
Q7. 我田引水の反対語は?
対照的な意味を持つ四字熟語には「公平無私」「公明正大」などがあります。
Q8. 自分の意見を言うだけでも我田引水になる?
いいえ。自分の希望を伝えること自体は問題ありません。他人の事情を無視し、自分だけが有利になるように進めることが我田引水のポイントです。
まとめ|我田引水は自分の都合を優先すること
我田引水の意味や使い方を振り返ってみましょう。
- 読み方は「がでんいんすい」。
- 意味は、自分に都合のよいように物事を考えたり進めたりすること。
- 「我が田に水を引く」というたとえから生まれた言葉。
- 江戸時代の日本のことわざが、明治時代に四字熟語になったと考えられている。
- 自分の利益だけを優先する態度を批判するときに使う。
- 似た言葉には「手前勝手」「牽強付会」などがある。
- 対照的な言葉には「公平無私」「公明正大」などがある。
- 自分の希望を伝えるだけでは、我田引水とは限らない。
我田引水を覚えるポイントは、「自分の田んぼにばかり水を引くように、自分の利益や都合を優先すること」です。
自分の意見を伝えることは大切ですが、みんなで何かを決めるときには、ほかの人の事情や希望にも耳を傾けたいですね。
学校や家庭で、自分だけが得をするように話を進めている場面に出会ったら、この四字熟語を思い出してみましょう。
参考資料
- 日本漢字能力検定協会「漢字ペディア|我田引水」(読み方・意味・類語)
- 三省堂『新明解四字熟語辞典』・学研『四字熟語辞典』「我田引水」(意味・用例)
- 小学館『ことわざを知る辞典』『精選版 日本国語大辞典』「我田引水」(日本での成立・江戸時代の表現・1899年の使用例)
- 小学館『デジタル大辞泉』『精選版 日本国語大辞典』「我が田へ水を引く」(元になったことわざ)