
例えば、いつも競い合っている二つのチームが、学校の行事を成功させるために力を合わせる場面です。
そんな状況を表す四字熟語が「呉越同舟(ごえつどうしゅう)」です。
呉越同舟とは、仲の悪い者同士が同じ場所に居合わせること。また、敵対する者同士が共通の困難や目的のために協力することです。
この言葉は、中国の古い書物『孫子(そんし)』にある、同じ舟に乗った敵同士のたとえに由来します。
この記事では、呉越同舟の意味や読み方、漢字の意味、『孫子』の故事、学校や家庭で使える例文を紹介します。
似ている四字熟語との違いや、親子で楽しめる3択クイズもあります。
呉越同舟(ごえつどうしゅう)の意味とは?
呉越同舟は「ごえつどうしゅう」と読みます。
仲の悪い人や、敵対している人たちが同じ場所に居合わせることを表す四字熟語です。
また、普段は対立している人たちが、共通の困難や目的のために協力することも意味します。
意味① 仲の悪い人たちが同じ場所にいること
例えば、いつも意見が対立している二つのチームが、同じ会議に参加する場面です。
「対立する二つのチームが、呉越同舟で会議に参加した」と表現できます。
この場合は、同じ場所にいることに注目しています。
必ずしも仲直りしたり、協力したりしているわけではありません。
意味② 敵対する人たちが力を合わせること
普段は仲の悪い人たちでも、共通の困難に直面すると、協力することがあります。
例えば、いつも対立している二つのグループが、地域の災害への対応では協力する場合です。
「二つのグループは、呉越同舟で復旧作業に取り組んだ」と表現できます。
この場合は、敵対している人たちが力を合わせたことを表しています。
小学生向けにひと言で説明すると?
呉越同舟とは、「仲の悪い人たちが同じ場所にいることや、困ったときに協力すること」です。
例えば、次のような場面が考えられます。
- いつも対立している二つのチームが、同じ会議に出席する。
- ライバル同士が、学校行事を成功させるために協力する。
- 普段は意見が合わない人たちが、災害への対応では力を合わせる。
- 競争相手の会社同士が、共通の問題を解決するために協力する。
大切なのは、もともと対立している人たちの関係があることです。
呉越同舟の漢字にはどんな意味がある?
呉越同舟は、「呉越」と「同舟」に分けると意味を理解しやすくなります。
「呉」と「越」は昔の中国の国の名前
「呉(ご)」と「越(えつ)」は、古代中国にあった国の名前です。
中国の春秋時代には、呉と越は激しく争う関係にありました。
そのため、呉と越という二つの国の名前は、敵対する者同士を表すたとえにも使われます。
この二国の争いは、「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」という別の四字熟語にも関係しています。
「同舟」は同じ舟に乗ること
「同(どう)」は、同じという意味です。
「舟(しゅう)」は、水の上を進む舟のことです。
「同舟」は、同じ舟に乗り合わせることを表します。
呉越同舟では、仲の悪い呉と越の人々が、同じ舟に乗る状況を表しているのです。
四つの漢字を合わせると?
呉越同舟は、敵対している呉と越の人々が、同じ舟に乗り合わせるという意味です。
そこから、仲の悪い者同士が同じ場所にいることや、共通の困難に対して協力することを表すようになりました。
「呉越」は敵対していた二つの国、「同舟」は同じ舟に乗ること。呉越同舟は、敵同士が同じ場所にいることや、力を合わせることを表します。
呉越同舟の由来は?中国の『孫子』九地篇
呉越同舟の出典は、中国の古典『孫子(そんし)』の「九地篇(きゅうちへん)」です。
『孫子』は、戦い方や軍隊の動かし方などを論じた兵法書として知られています。
現代では、戦略や組織の運営について考えるときにも読まれることがあります。
『孫子』の原文を見てみよう
『孫子』九地篇には、次の一節があります。
「夫呉人與越人相惡也、當其同舟濟而遇風、其相救也如左右手。」
これは、呉と越の人々は互いに仲が悪いけれど、同じ舟に乗って川を渡る途中で風に遭えば、左右の手のように助け合う、という意味です。
難しい文章ですが、場面を想像してみるとわかりやすいですよ。
仲の悪い人たちが同じ舟に乗ったら?
昔の中国には、対立している呉と越という二つの国がありました。
その国の人たちが、同じ舟に乗って川を渡ることになったと想像してみましょう。
普段は仲が悪くても、舟の上で強い風に遭い、危険な状況になったらどうでしょうか。
片方の人たちだけでは、安全を守れないかもしれません。
そんなときには、お互いに助け合う必要が出てきます。
『孫子』では、まるで右手と左手が助け合うように協力すると表現しています。
左右の手のように助け合うとは?
例えば、大きな荷物を持ち上げるとき、右手だけでなく左手も使うことがありますね。
右手と左手は別々ですが、一つの体のために協力しています。
『孫子』では、この関係を使って、普段は仲の悪い人たちでも、共通の危機に直面すれば助け合うことがあると説明しています。
呉越同舟の故事では、敵同士でも共通の危機に直面すると、左右の手のように助け合うことがあると説かれています。
これは本当にあった事件なの?
『孫子』の文章では、呉と越の人々が同じ舟に乗り、風に遭った場合を、軍隊の協力関係を説明するための例えとして挙げています。
実際に特定の舟で事故が起き、呉と越の人々が協力して無事に帰ったという歴史的事件が記録されているわけではありません。
そのため、舟の上で交わされた会話や、最後に仲直りしたという物語を、歴史上の事実として紹介することは避けましょう。
古典に書かれた内容と、理解を助けるための想像は、分けて考えることが大切です。
呉越同舟は日本でも使われている?
呉越同舟は、中国の古典に由来し、日本語でも使われるようになった四字熟語です。
小学館『精選版 日本国語大辞典』には、「呉越同舟」の使用例として、岡本かの子の小説『生々流転(しょうじょうるてん)』(1939年)が紹介されています。
この作品では、呉越同舟という言葉が、同じ舟に乗る人々の関係を表す文脈で使われています。
ただし、この作品が日本で初めて呉越同舟を使ったという意味ではありません。
辞典に掲載された使用例と、言葉が生まれた時期は区別しましょう。
呉越同舟の使い方と例文
呉越同舟は、「呉越同舟となる」「呉越同舟で協力する」「呉越同舟の状態」などの形で使われます。
学校生活での例文
- 「いつも対立する二つのグループが、呉越同舟で学級会に参加した。」
- 「ライバル同士の二人が、文化祭では呉越同舟で協力した。」
- 「普段は意見の合わない委員たちが、学校行事を成功させるために呉越同舟となった。」
- 「別々のチームで競い合っていた二人が、地域の清掃活動では呉越同舟で働いた。」
家庭や日常生活での例文
- 「普段は意見が合わない兄と姉が、家族の旅行計画では呉越同舟で協力した。」
- 「対立していた町内会のグループが、地域の防災訓練では呉越同舟となった。」
- 「考え方の違う二人が、同じ会議に呉越同舟で出席した。」
スポーツでの例文
- 「いつも競い合う二つのチームが、合同練習では呉越同舟となった。」
- 「ライバルだった選手たちが、地域のスポーツ大会を支えるために呉越同舟で協力した。」
- 「対立していたクラブ同士が、大会の運営では呉越同舟で力を合わせた。」
ニュースや社会での例文
- 「意見の対立する二つの政党が、災害対策では呉越同舟で協力した。」
- 「競争相手の企業同士が、共通の環境問題への対応で呉越同舟となった。」
- 「対立していた団体の代表者が、呉越同舟で同じ会議に参加した。」
- 「普段は利害の異なる企業が、地域の復旧作業では呉越同舟で取り組んだ。」
このように、呉越同舟は、もともと対立している人や組織が同席したり、協力したりする場面で使われます。
呉越同舟と一致団結の違いは?
「一致団結(いっちだんけつ)」は、多くの人が心を一つにして、まとまることを意味します。
例文:「クラス全員が一致団結して、運動会に取り組んだ。」
一致団結は、もともと仲の悪い人たちである必要はありません。
一方、呉越同舟は、仲の悪い人や、敵対している者同士の関係が前提になります。
例文:「対立していた二つのチームが、呉越同舟で行事を成功させた。」
どちらも協力する場面で使えますが、呉越同舟は、もともと対立していることが重要な違いです。
呉越同舟と同舟相救うの違いは?
「同舟相救う(どうしゅうあいすくう)」は、同じ舟に乗っている者同士は、普段は敵対していても、危機に直面すると助け合うという意味です。
呉越同舟と同じく、『孫子』九地篇に由来する表現です。
ただし、呉越同舟は、仲の悪い者同士が同じ場所に居合わせることも表します。
一方、同舟相救うは、共通の危機に直面して助け合うことに重点があります。
呉越同舟は「敵同士の同席・協力」、同舟相救うは「敵同士でも危機には助け合うこと」に重点があります。
呉越同舟と似ている四字熟語
楚越同舟(そえつどうしゅう)
楚越同舟は、仲の悪い者同士が同じ場所や境遇にあることを意味します。
呉越同舟と非常に近い意味を持つ四字熟語です。
違いは、使われている国の名前が「呉と越」ではなく「楚と越」になっていることです。
同舟共済(どうしゅうきょうさい)
同舟共済は、同じ舟に乗っている人たちが、危険や困難を一緒に乗り越えようと助け合うことです。
協力するという点では呉越同舟と似ています。
ただし、呉越同舟では、もともと仲が悪い関係であることが重要です。
敵に塩を送る(てきにしおをおくる)
「敵に塩を送る」は、敵対する相手が困っているときに、その相手を助けることです。
例文:「ライバルのチームが困っていたので、練習場所を貸して敵に塩を送った。」
呉越同舟が共通の困難などのために協力することを表すのに対し、敵に塩を送るは、敵対する相手を助けることに重点があります。
呉越同舟と反対の意味に近い言葉
対立(たいりつ)
対立は、意見や立場などが食い違い、互いに向き合うことです。
例文:「二つのグループは意見が対立し、協力できなかった。」
呉越同舟が協力する場合とは対照的ですが、呉越同舟の出発点には対立関係があるため、完全な反対語ではありません。
反目(はんもく)
反目は、互いに仲が悪く、対立することです。
例文:「二つの団体は長い間、反目し合っていた。」
こちらも、呉越同舟そのものの厳密な対義語ではありません。
呉越同舟を使うときの注意点
ただ協力しているだけでは呉越同舟ではない
呉越同舟は、もともと仲が悪い人たちや、対立している者同士について使う言葉です。
仲のよい友達が協力した場合は、「一致団結」「力を合わせる」などの表現の方が自然です。
同じ場所にいるだけで仲直りしたとは限らない
呉越同舟には、仲の悪い人たちが同じ場所に居合わせるという意味もあります。
そのため、呉越同舟になったからといって、必ず仲直りしたとは限りません。
同じ場所にいる意味なのか、協力する意味なのか、前後の文章で判断しましょう。
『孫子』のたとえを実際の事件と混同しない
『孫子』の舟の話は、敵対する者同士でも共通の危機に直面すれば協力し得る、ということを説明するためのたとえです。
実際に誰が舟に乗り、どんな会話をして、どのように帰ったのかまで記録した歴史物語ではありません。
古典の説明では、確認できる原文と、想像で付け加えた場面を区別することが大切です。
無理に仲直りしなければならないという意味ではない
呉越同舟は、敵対する者同士が協力することを表します。
しかし、苦手な相手や、自分を傷つける相手と、必ず仲よくしなければならないという意味ではありません。
必要に応じて距離を取ったり、先生や家族などに相談したりすることも大切です。
呉越同舟を英語で表すと?
呉越同舟に近い英語表現には、次のようなものがあります。
- bitter enemies in the same boat:敵対する人たちが同じ舟に乗っていること。
- work together despite their differences:対立や違いがあっても協力する。
- unlikely allies:普段は協力しそうにない人たちが協力する関係。
例えば、次のように言えます。
The rival teams worked together despite their differences.
意味:「ライバル同士のチームが、対立を越えて協力しました。」
日常生活では、同じ場所にいることを表すのか、協力することを表すのかによって、英語も使い分けると自然です。
親子でチャレンジ!呉越同舟の3択クイズ
問題:次のうち、呉越同舟の使い方として最も適切なのはどれ?
- 「仲のよい友達が、いつもどおり一緒に遊んでいたので、呉越同舟だった。」
- 「一人で最後まで宿題をやり遂げたので、呉越同舟だった。」
- 「普段は対立している二つのチームが、地域の災害対応では呉越同舟で協力した。」
答えと解説を見る
正解は③です。
呉越同舟は、仲の悪い者同士が同じ場所に居合わせたり、共通の困難や目的のために協力したりすることです。
③は、普段は対立しているチームが、共通の困難のために協力しているので、適切な使い方です。
①は、もともと仲のよい友達が一緒に遊んでいるだけなので、呉越同舟には当てはまりません。
②は、一人で努力している場面であり、敵対する者同士の関係を表していません。
呉越同舟についてのよくある質問
Q. 呉越同舟の読み方は?
「ごえつどうしゅう」と読みます。
Q. 呉越同舟の意味は?
仲の悪い者同士が同じ場所に居合わせること。また、共通の困難や目的のために協力することです。
Q. 呉越同舟の由来は?
中国の古典『孫子』九地篇にある、呉と越の人々が同じ舟に乗り、風に遭えば左右の手のように助け合うというたとえに由来します。
Q. 呉越同舟は正式な四字熟語なの?
はい。小学館『デジタル大辞泉』『精選版 日本国語大辞典』などにも掲載されています。
Q. 呉と越は本当にあった国なの?
はい。古代中国に存在した国です。春秋時代には、両国は激しく争う関係にありました。
Q. 呉越同舟は実際にあった出来事なの?
出典の『孫子』では、敵対する者同士の協力関係を説明するためのたとえとして登場します。特定の舟の事故を記録した歴史的事件と断定することはできません。
Q. 呉越同舟は同じ場所にいるだけでも使える?
はい。仲の悪い者同士が同じ場所に居合わせる、という意味でも使われます。
Q. 呉越同舟と一致団結の違いは?
呉越同舟は、もともと対立している者同士の同席や協力を表します。一致団結は、対立の有無に関係なく、多くの人が心を一つにすることです。
Q. 呉越同舟の類義語は?
「楚越同舟」「同舟相救う」「同舟共済」などがあります。ただし、言葉ごとに少しずつ意味が異なります。
Q. 呉越同舟は褒め言葉なの?
必ずしも褒め言葉ではありません。対立している人たちが協力する場合には肯定的に使われることがありますが、気まずい同席を表す場合にも使えます。
まとめ|呉越同舟は敵同士の同席や協力を表す言葉
呉越同舟の意味や使い方を振り返ってみましょう。
- 読み方は「ごえつどうしゅう」。
- 仲の悪い者同士が同じ場所に居合わせることを意味する。
- 共通の困難や目的のために、敵対する者同士が協力することも表す。
- 「呉」と「越」は、古代中国にあった敵対する二つの国。
- 「同舟」は、同じ舟に乗り合わせること。
- 出典は中国の兵法書『孫子』九地篇。
- 故事では、同じ舟に乗った呉と越の人々が、風に遭えば左右の手のように助け合うと説かれている。
- 「呉越同舟となる」「呉越同舟で協力する」などの形で使う。
- 似た表現には「楚越同舟」「同舟相救う」「一致団結」などがある。
呉越同舟を覚えるポイントは、「仲の悪い者同士が同じ場所にいることや、共通の困難に直面して協力すること」です。
学校やニュースなどで、普段は対立している人たちが同じ場所にいたり、協力したりする場面を見かけたら、この言葉を思い出してみてください。
また、四字熟語の背景にある古典の文章を知ると、昔の人たちが人間関係や協力についてどのように考えていたのかも学べますね。