
家族と同じことを考えていて、思わず笑ってしまった。
そんな経験はありませんか?
言葉にしていないのに、お互いの気持ちが通じ合う。そんな様子を表す四字熟語が、以心伝心(いしんでんしん)です。
以心伝心とは、言葉や文字で説明しなくても、お互いの心や気持ちが通じ合うことを意味します。
実はこの言葉、仏教、特に禅宗(ぜんしゅう)の教えと深い関係があります。
この記事では、以心伝心の意味や読み方、漢字の成り立ち、由来、学校や家庭で使える例文、似た四字熟語との違いを、小学生にもわかりやすく解説します。
以心伝心の意味と読み方
以心伝心は、「いしんでんしん」と読みます。
意味は、言葉や文字を使わなくても、お互いの考えや気持ちが自然に伝わることです。
例えば、サッカーの試合で、チームメイトと目が合っただけでパスを出すタイミングが伝わったとします。
そんなとき、「二人は以心伝心でプレーしている」と表現できます。
また、長く一緒に過ごしている家族や友達の間で、言葉にしなくても相手の考えを察する場面にも使われます。
以心伝心はテレパシーのこと?
以心伝心は、超能力で相手の心を読み取るという意味ではありません。
例えば、友達の表情やしぐさ、これまで一緒に過ごした経験などから、言葉にしなくても気持ちが伝わったと感じることがあります。
「いま、あの人は何を考えているのかな?」と考え、相手の様子から気持ちを察することもあるでしょう。
このような心の通い合いを表す言葉であり、実際に人の心を読み取る不思議な力があるという意味ではありません。
仲良しでなければ使えないの?
以心伝心は、家族や親友など、親しい人との関係を表すときによく使われます。
しかし、必ず長い付き合いが必要というわけではありません。
初めて一緒に活動した人と、言葉にしなくても考えが伝わったように感じる場面でも、使うことができます。
以心伝心の漢字の意味と成り立ち
以心伝心は、「以」「心」「伝」「心」という四つの漢字からできています。
- 以(い):〜を使って、〜によって。
- 心(しん):心、気持ち。
- 伝(でん):伝えること。
- 心(しん):心、気持ち。
これらを組み合わせると、「心をもって心に伝える」という意味になります。
以心伝心は、「心を以(もっ)て心に伝える」と覚えると、漢字の意味がわかりやすくなります。
言葉や文字だけでは表現しきれないことが、心から心へ伝わるというイメージですね。
「意心伝心」は間違い?
以心伝心を書くときに注意したいのが、最初の漢字です。
- 以心伝心:正しい表記。
- 意心伝心:誤った表記。
最初の「以」は、「〜をもって」という意味の漢字です。
「意味」や「意見」に使う「意」とは異なります。
「心を以て心に伝える」と覚えておくと、書き間違えにくくなりますね。
以心伝心の由来|仏教や禅宗との関係
以心伝心は、もともと仏教、特に禅宗で使われてきた言葉です。
禅宗では、仏教の大切な教えや悟りの境地を、言葉や文字だけに頼らず、師匠の心から弟子の心へ伝えることを大切にしてきました。
その考え方を表す言葉の一つが、以心伝心です。
漢字ペディアでは、中国の禅宗の書物『景徳伝灯録(けいとくでんとうろく)』が出典として紹介されています。
また、日本の鎌倉時代の僧侶・道元(どうげん)が著した『正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)』にも、以心伝心という表現が見られます。
現在では、こうした仏教の意味から広がり、家族や友達同士で気持ちが通じ合うことを表すようになりました。
拈華微笑(ねんげみしょう)という故事
以心伝心に関係する禅宗の故事として、拈華微笑(ねんげみしょう)という話が知られています。
物語では、お釈迦さまが弟子たちの前で一輪の花を手にして見せました。
しかし、弟子たちは何を伝えようとしているのかわかりません。
そんな中、摩訶迦葉(まかかしょう)という弟子だけが、その意味を理解してほほえんだといいます。
言葉を交わさなくても、師匠の伝えようとしたことが弟子に伝わったというお話です。
禅宗では、言葉だけでは伝えられない教えを表す故事として伝えられています。
ただし、これは禅宗に伝わる宗教的な故事です。実際にこの出来事が起きたと、歴史的に確認されているわけではありません。
また、この故事が語られた瞬間に「以心伝心」という四字熟語が生まれたと断定することもできません。
不立文字(ふりゅうもんじ)との関係
禅宗には、不立文字(ふりゅうもんじ)という言葉もあります。
これは、仏教の大切な教えを理解するうえで、文字や言葉だけに頼らないという考え方です。
「以心伝心」と「不立文字」は、どちらも禅宗と深く結びついています。
ただし、不立文字は「本を読んではいけない」「言葉を使ってはいけない」という意味ではありません。
言葉や文字だけでは伝えきれないものもある、という考え方を表しています。
以心伝心の使い方と例文
以心伝心は、学校や家庭、スポーツ、仕事など、さまざまな場面で使われます。
例文① 学校の友達
「親友とは以心伝心で、目が合っただけで考えていることが伝わるときがある。」
仲の良い友達同士で、気持ちが自然に通じ合っている様子です。
例文② サッカーの試合
「二人の選手は以心伝心のように、声をかけなくても見事なパスをつないだ。」
練習を重ねたチームメイト同士の息が合っている場面です。
例文③ 家族との会話
「母が何も言わずに欲しかったものを渡してくれて、以心伝心だと思った。」
家族の間で、言葉にしなくても気持ちが伝わったと感じた場面です。
例文④ 兄弟姉妹
「姉と同時に同じことを言って、以心伝心だねと笑い合った。」
考えていることが偶然ぴったり重なった場面です。
例文⑤ 学校の発表会
「劇の練習を重ねたおかげで、舞台では以心伝心の連携ができた。」
一緒に活動する中で、お互いの動きを理解できるようになったことを表しています。
例文⑥ 仕事
「長年一緒に働いている二人は、まるで以心伝心のように作業を進めていた。」
相手の動きや考えを理解し、息を合わせて仕事をしている様子です。
以心伝心と似た意味の言葉
阿吽の呼吸(あうんのこきゅう)
阿吽の呼吸は、二人以上の人が、言葉を交わさなくても自然に息を合わせて行動することです。
例文:「二人は阿吽の呼吸で、重い机を運んだ。」
以心伝心は、心や考えが通じ合うことに重点があります。
一方、阿吽の呼吸は、行動するタイミングや息がぴったり合うことに重点があります。
意気投合(いきとうごう)
意気投合は、お互いの気持ちや考えがよく合い、気が合うことです。
例文:「初めて会った二人は、好きな本の話で意気投合した。」
以心伝心とは異なり、意気投合は言葉を交わして気が合う場面でも使われます。
拈華微笑(ねんげみしょう)
拈華微笑は、言葉を交わさずに心が通じ合うことを表す四字熟語です。
先ほど紹介した禅宗の故事に由来する言葉で、以心伝心と意味が非常に近い表現です。
日常会話では、以心伝心のほうが使いやすいでしょう。
心が通じ合う
心が通じ合うとは、お互いの気持ちや考えを理解し合うことです。
例文:「友達とたくさん話すうちに、心が通じ合うようになった。」
以心伝心と意味が近いですが、「心が通じ合う」は、言葉を交わして理解し合う場合にも使えます。
以心伝心と反対の意味に近い言葉
同床異夢(どうしょういむ)
同床異夢は、同じ立場にいたり、同じことに取り組んでいたりしても、考えや目的が異なることを表します。
例文:「同じチームでも目指すものが違い、同床異夢の状態だった。」
心が通じ合う以心伝心とは、対照的な様子です。
意思疎通ができない
意思疎通ができないとは、自分の考えや気持ちが相手にうまく伝わらず、理解し合えないことです。
例文:「説明が足りず、うまく意思疎通ができなかった。」
以心伝心とは対照的ですが、四字熟語として完全に対応する対義語ではありません。
すれ違い
すれ違いは、考えや気持ちがかみ合わないことを表す場合があります。
例文:「小さなすれ違いから、友達とけんかになってしまった。」
気持ちが通じ合っていない状況を表す言葉です。
以心伝心でも言葉で伝えることは大切
以心伝心という言葉を知ると、「仲の良い人なら、何も言わなくてもわかってくれる」と思うかもしれません。
しかし、家族や親友であっても、相手の気持ちをいつでも正しく理解できるわけではありません。
例えば、友達に手伝ってほしいことがあっても、何も言わなければ気づいてもらえない場合があります。
そんなときは、「少し手伝ってくれる?」と伝えてみるとよいでしょう。
また、友達が悲しそうな顔をしていても、何があったのかは本人に聞かなければわからないこともあります。
「何かあった?」「話したくなったら聞くよ」と声をかけることもできますね。
以心伝心は、何も言わなくても必ず伝わるという意味ではありません。大切な気持ちは、言葉で確かめたり伝えたりすることも必要です。
言葉にしなくても気持ちが通じ合うことと、きちんと話し合うこと。その両方を大切にしたいですね。
以心伝心は英語で何という?
以心伝心は、場面に応じて英語で説明できます。
Understand each other without words
「言葉なしでお互いを理解する」という意味です。
例文:「We understand each other without words.」
「私たちは言葉を使わなくても、お互いを理解できます。」
Be on the same wavelength
「考え方や感じ方が合っている」「気が合う」という意味の表現です。
例文:「We are on the same wavelength.」
「私たちは気が合います。」
ただし、こちらは、必ずしも言葉を使わずに気持ちが伝わることを表すわけではありません。
日本語の以心伝心と完全に同じ意味の英語が一つだけあるわけではないため、場面に合わせて表現を選びましょう。
親子でチャレンジ!以心伝心の3択クイズ
問題:以心伝心の意味として正しいのはどれ?
- 相手と必ず同じ意見を持ち、けんかをしないこと。
- 言葉や文字で説明しなくても、お互いの心や気持ちが通じ合うこと。
- たくさんの言葉を使って、相手を説得すること。
答えと解説を見る
正解は②です。
以心伝心は、言葉や文字を使わなくても、お互いの心が通じ合うことを表します。
①のように、意見がいつも同じで、絶対にけんかをしないという意味ではありません。
③のように、言葉をたくさん使って説得することでもありません。
友達と目が合っただけで、次に何をするかが伝わったように感じる場面などで使えます。
以心伝心についてよくある質問
Q. 以心伝心の読み方は?
「いしんでんしん」と読みます。
Q. 以心伝心は四字熟語ですか?
はい。漢字四文字からなる四字熟語で、漢字ペディアなどの辞典にも掲載されています。
Q. 以心伝心の意味は?
言葉や文字で説明しなくても、お互いの心や気持ちが自然に通じ合うことです。
Q. 以心伝心は良い意味ですか?
一般的には、心が通じ合う良い関係を表すときに使われます。ただし、相手と考えが一致していることを説明する場合にも使われます。
Q. 以心伝心はテレパシーのことですか?
いいえ。超能力を意味する言葉ではありません。言葉にしなくても気持ちが伝わるように感じる、心の通い合いを表します。
Q. 以心伝心は誰の言葉ですか?
仏教、特に禅宗で使われてきた言葉です。『景徳伝灯録』などの古典に用例がありますが、特定の一人が初めて作った言葉だと断定できるわけではありません。
Q. 以心伝心と阿吽の呼吸は同じ意味ですか?
よく似ていますが、以心伝心は心や考えが通じ合うこと、阿吽の呼吸は言葉を交わさなくても息を合わせて行動できることに重点があります。
Q. 以心伝心と意気投合の違いは?
以心伝心は言葉を使わずに心が通じ合うこと、意気投合は考えや気持ちがよく合うことです。意気投合は会話を通して仲良くなった場合にも使えます。
Q. 「意心伝心」と書いても正しいですか?
いいえ。正しい表記は「以心伝心」です。最初の漢字は「以」を使います。
Q. 以心伝心の反対語は何ですか?
対照的な四字熟語として「同床異夢」があります。ただし、完全に一対一で対応する対義語というわけではありません。
まとめ|以心伝心は言葉がなくても心が通じ合うこと
以心伝心(いしんでんしん)とは、言葉や文字を使わなくても、お互いの心や気持ちが通じ合うことを表す四字熟語です。
今回のポイントを振り返りましょう。
- 読み方は「いしんでんしん」。
- 言葉や文字で説明しなくても、心が通じ合うことを意味する。
- 「心を以て心に伝える」という漢字の意味から理解できる。
- もともとは仏教、特に禅宗と関係の深い言葉。
- 拈華微笑は、言葉を使わずに教えが伝わることを象徴する禅宗の故事。
- 似た言葉には「阿吽の呼吸」「意気投合」などがある。
- 「同床異夢」は対照的な意味の四字熟語。
- 正しい漢字は「以心伝心」で、「意心伝心」は誤り。
学校の友達との遊びやスポーツ、家族との何気ない会話の中にも、心が通じ合ったと感じる瞬間があります。
そんなときは、「以心伝心だね」と使ってみてください。
そして、言葉にしなくても伝わる気持ちを大切にしながら、必要なことはきちんと伝えることも忘れないようにしましょう。